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小児の心身症

心身症

身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与している病態.

心身症は何らかの心理社会的ストレス下で起こる.ストレスとは、心身の状態がそれなりに「安定していた」状態から変化した状態.望ましくない状態ばかりでなく、個人にとっては喜ばしいことでも、そこに変化が生じている場合、その状態はストレスとされる.

ストレスをひき起こすきっかけとなった事柄をストレッサーとよぶ.

ストレッサーによって生じるストレスは修飾因子によって左右される.

→→→再適応(問題回避)

ストレッサー →→→→→→ ストレス →→→→→→

        修飾因子        修飾因子 →→→発症(問題出現)

 

小児の心身症の特徴

  • 心身の関係が未熟で精神的ストレスが身体症状化しやすい.
  • 年齢が小さいほどストレッサー耐性が低い.
  • 純粋な身体疾患であっても、慢性化すると日常生活に影響を与え、成長発達過程が阻害され、身体疾患自体が心身症化することがある.

 

どのような時に心の異常サインを疑うか

  • 症状が多様で変わりやすい.腹痛と頭痛がともに見られたり、変化したりする.
  • 症状と検査所見が合わない.検査の多くは正常所見.
  • 症状の期間が長く、投薬は無効で、転医が多い.
  • 子どもの落ち着きがなく緊張していたり、逆に反応に乏しく、無表情な場合.
  • 症状の訴えが異常に強かったり、逆に訴えの割に本人は元気な場合.

 

心の異常サイン(よく見られる症状)

  • 消化器症状:腹痛、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振
  • 神経症状:頭痛、多動、けいれん、しびれ、失神
  • 呼吸器症状:呼吸困難、咳、胸痛
  • 循環器症状:めまい、たちくらみ、頻脈、動悸
  • 泌尿器症状:頻尿、夜尿、昼間遺尿
  • 皮膚症状:多汗、かゆみ、蕁麻疹
  • 全身症状:発熱、全身倦怠感、痩せ
  • 食事行動:拒食、過食、異食
  • 睡眠行動:不眠、夜驚、夜泣き

 

心身症の治療

  • 身体症状への対症療法:症状に応じて鎮痛剤や整腸剤、睡眠薬などの投与
  • 環境因子に対する原因療法:親に対して子どもとのかかわり方の指導

子どもの訴えを頭ごなしに怒ったり、批判したりせず、きちんと聞いて受け入れる.

心の安定を保てるよう、日頃から規則正しい生活環境を整える.

 

1.遺尿症

不随意に昼間または夜間にベッドや衣服のなかへの排尿を反復するもので、年齢は5歳以上の小児で週2回以上、3ヶ月以上みられるもの.

≪原因≫

 1)覚醒障害(膀胱が充満した刺激で目が覚めない)

 2)機能的膀胱容量の減少(朝の覚醒時まで尿を保持できない)

 3)睡眠中の抗利尿ホルモン分泌の減少(睡眠中の尿量が増加する)

≪治療≫

 1)「夜尿おこし」はしない

 2)水分の摂取リズム:水分のがぶ飲みはしない。

 3)冷え性タイプは暖めて寝る 4)薬物療法

 

2.夜驚症

夜驚症:睡眠中に突然とびおきて泣いたり大きな声をあげたりするもの.目覚めに時間がかかること、睡眠中におきたことを覚えていないことが「悪夢」との相違.

夢中遊行:睡眠中に突然起き上がり動き出す.意識は混濁、無目的、常同的行動.

 

3.チック症

不随意で突然に起こり、急速で反復性の非律動的の常同的な運動あるいは音声の発現.

単純型運動性チック:まばたき、口をゆがめる、肩すくめ、上肢、躯幹、下肢.

単純型音声性チック:咳払い、鼻を鳴らす.

複雑型運動性チック:自分を叩く、飛び上がる.

複雑型音声性チック:汚言、反復言語.

トウレット症候群:1年以上続く多彩な運動性チックと音声チックの両方を有する.

 

4.不登校

不登校:学校に登校しない状態が断続的あるいは継続的に続いている状態.

症状:腹痛、頭痛、嘔気(気持ち悪い)、めまい、微熱、倦怠感、下痢など多彩で変動する.朝起きられない(昼夜逆転が起こるため)

診断:基本的には除外診断.器質的疾患の有無を検索し、異常がないことを確認.

病気扱いせず、「教育の問題は教育へ返す」

 

5.神経性食思不振症
診断基準

 ①標準体重―20%以上のやせ

 ②食行動の異常(拒食、過食、隠れ食いなど)

 ③体重や体型について歪んだ認識と病識の欠如

 ④やせていても肥満・体重増加に対する異常な恐怖がある

 ⑤3ヶ月以上の無月経

家族の特性:絡み合い、過保護、硬直性、葛藤回避

きっかけ:ダイエットが多い 強化因子:飢餓の心理的影響

治療法:行動制限療法.カウンセリング.家族:消極的な協力者

治癒判定基準:身体面 生理が3ヶ月以上ある 心理面 やせ願望がなくなる

       行動面 対人交流の復活

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