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発作性心房細動とアブレーション(院長のチョイス)

[2021.10.01]

平成23年(当時55歳)は地区の区長、長男の婚約、結婚、長女の婚約と公私とも大変忙しい年でした。

11月自宅で就寝中午前4時頃、突然動悸、息苦しさ、胸の不快感が出現しました。直ちに、一階の医院へ降りて心電図を取りましたが、その時点では、洞調律に戻っていました。「これは、ヤバイな」と思い、すぐに「オムロン携帯型心電計」を注文しました。

11月末夕方、テレビを見ていて、急に動悸出現、携帯型心電計が役立ち心房細動と診断できました。 たまたま帰省していた長男(研修医)に付き添われて、O病院救急外来受診。抗不整脈薬点滴と抗不整脈薬内服し30分で改善しました。心エコー、甲状腺機能とも異常ありませんでした。循環器科の主治医からは、しばらく発作は起きないでしょうといわれたのですが、翌日、翌々日にも朝、日課である散歩をすると心房細動が起こり、抗不整脈薬で抑えました。その後も、毎朝動悸出現するようになり、抗不整脈薬追加されるも改善みられず、なんでこんな病気になったんやろか、明日はどうなるんやろという不安でいっぱいになりました。

発作性心房細動を調べてみると、だいたい50代後半で発症し、発作の間隔がだんだん短くなり、年間5%程度の頻度で60代後半から70代にかけて、持続性、長期持続性となり、永続化していく進行性の疾患だということがわかりました。抗不整脈薬の効果は完全ではなく、取っ替え引っ替え使っているうちに心房の線維化が進んで難治性になってしまうようです。

 そこで、私は根治を目指せる唯一の治療法であるカテーテルアブレーション(CA)をチョイスすることにしました。やるなら早いに越したことはないので、12月紹介先の循環器専門病院不整脈科を受診、年末にアブレーション手術を受けることになりました。「1回の治療で80%、2回目まで行うと90%成功します。先生は基礎疾患もないので1回でまず大丈夫でしょう。」という力強い説明を受けました。不整脈科では、違う種類の抗不整脈薬と抗凝固薬投与を受け、以後発作はみられなくなりました。外来で造影CTの後、雪の降る12月末入院しました。完全看護の病院でしたが、怖がりなので、妻には近くのホテルに泊まってもらい付き添ってもらいました。

入院初日、「ケイショクします。」といわれ、コーヒーとケーキがでてくるのかと思ったら実はつらい検査「経食道心エコー」のことでした。変な略語を使うのはやめてほしいなと思いました。入院2日目午前ストレッチャーで造影室に入ると10人位のスタッフに取り囲まれ、あれよあれよという間に、アブレーション手術が終わりました。術後6時間仰臥位での安静が苦痛でしたが、シューベルトのピアノソナタを聴いて乗り切りました。夜、尿道カテーテルを抜去したのですが、その時の疼痛には参りました。最初の排尿のときは、激痛のあまり思わず涙がこぼれました。その後経過も良好で、大晦日に退院できました。

正月はのんびり過ごし、心室性期外収縮が時々みられるくらいで安定していたのですが、1月半ばより、再び連日動悸が起こるようになりました。「1回で完治すると太鼓判を押してもらったのになあ」とがっくりしましたが、気を取り直して、不整脈科を受診。抗不整脈薬再開し、6月に2回目のアブレーションをすることになりました。平成24年6月半ば入院、つらい経食道心エコー検査を受け、入院2日目アブレーション再手術、伝導再開部位の同定と治療を受けました。術後の安静は気合を入れるためベートーヴェンのピアノソナタを聴いて過ごしました。術後経過良好で、15日無事退院しました。どういうわけか巷の噂話では、夫婦で1週間ベトナム旅行をしてきたことになっていました。

幸いなことに2回目のアブレーション以降は、全く発作は見られず、抗不整脈薬は中止、抗凝固薬も9月半ばには中止になり、晴れて服薬なしとなりました。服薬中はいつ心房細動が起こるかという不安と、抗凝固療法もしていたので転倒が心配でスポーツどころではありませんでした。夜、急にリンゴが食べたくなり、果物ナイフで皮をむいていたら誤って自分の指を切ってしまい、半日出血が止まらなかったこともありました。薬から解放されると、いままでと同じように、テレビ体操、腹筋背筋、腕立て伏せ、ゴルフの素振り、散歩ができ、楽しく診察をして、打ちっぱなしへ行くといういつもの生活がふつうにできるようになりました。2回目のアブレーション治療後、9年が経過しましたが、発作は全く見られていません。医学の進歩に感謝しつつ、平凡な日常のありがたさをかみしめています。

最後に、発作性心房細動と掛けて おそ松くんのイヤミと解く。

その心は シェーします。CAします。おそまつでした。

心房細動は、60歳を境に急激に発生頻度が増加し、80歳以上では10%に認められるそうです。

この闘病記が参考になれば幸いです。

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